マツダ車は今まで2回オーナーになったことがある。初代アテンザが出てきた時には、あまりのスタイルの良さに驚いた。後に試乗したら、親のトヨタ車に比べてあまりにハンドリングがクイックすぎるのにおっと思ったけど、総合ではあの時点で最高のコスパで流麗なスタイルを持つとても良い車だったと思ってる(初代アクセラのスタイルもあの当時ではCセグの中では飛びぬけてよかった、ステアリングが日本車とは思えないほど重かったけど)。
いままで知らなくて恐縮なのだが、初代アテンザの主査・金井氏は、その後フォード傘下の中において順調に出世し、最終的には会長になっている。金井氏はSKYACTIVの開発も指揮して、マツダ車をすべて刷新した。その彼のインタビュー集である。
SKYACTIVテクノロジーによる車づくりが各所で絶賛され、最終的にはトヨタとの提携までに至ったのは皆さん知っての通り。全く国内に存在感が無く、ときめく車も無い日産とはあらゆる意味で対照的なメーカーだ。
親会社のフォードは、1910年のフォードT型の製造時から「同一のものを大量生産」によって競争力を確保するメーカーだった。個性的な車でホームランと三振を繰り返すマツダとは組織のカルチャーがまるで違う。そして、リーマンショックを契機に彼らは、親会社と袂を分かち、全車種のシヤシーとエンジンを全部自分たちで開発することになった(経緯は、本書を見てほしい)。マツダがフォードの出先メーカーとはならず、マツダ自身であり続けようとした結果、とてつもない困難な壁にぶつかったわけだ。
それをどう乗り越えていったのか。キーワードは”志”だった。
この本には、経営本といっても、数値はほぼ出てこない。マツダは大企業だが、同じ業界にはもっと大きな企業がいっぱいある。普通に正面からぶつかったら、必ず負ける。資本の乏しい中で、どういう選択肢をすべきなのか。
ぜひ読んでほしい。